2014年7月31日木曜日

ローソンの「盛岡風冷麺」

盛岡風冷麺(税込499円)。2014年7月
東北地方のセブン・イレブンでは、夏になると盛岡冷麺があるらしい。そのことを福島県出身の友人がしきりに自慢してくるので、悔しくて調べたら、ちゃんと東京にもあった。ただ、セブン・イレブンではなくローソンだ。ふだんローソンはめったに使わないので見落としていた。

冷やし中華と同じように、麺、つゆ、具が分かれている構造。具はキュウリ、肉、キムチ、ゆで卵、刻みネギ。盛岡冷麺の特徴であるスイカは入っていない。あと、辛いタレがついている。これらを自分で盛りつけて食す。この手の商品の宿命として、麺はお互いに貼り付いて団子のようになっている。だから、麺につゆを注いだら、具を盛りつける前に箸で麺をほぐしておくのが無難だろう。


で、食した感想はというと、正直なところ「これじゃない」感が拭えなかった。たしかに、麺はちゃんとコシがあって、盛岡冷麺の特徴を抑えている。しかし、つゆが甘い。保存性を増すために糖分を多めにしなきゃならないとか、そういう事情もあるのかもしれないけど、僕としてはちょっと苦手な感じの甘さだ。酢があればそれで甘みを誤魔化せるのだが、酢は付属していない。

そして、これもコンビニフーズの宿命なのだろうが、あんまりちゃんと冷えていないのである。冷麺に期待される「冷」の度合いは、ざる蕎麦や冷やし中華に求められる「冷」よりも高水準だ。素麺と同じく、氷が浮いているぐらいがちょうどいい。しかし、このローソンの冷麺は、売り場の冷蔵ケースに陳列されている時点でも、きっとそんなに冷たいわけではない。そして、それを購入し、暑いなか袋に提げて持ち帰るので、さらにぬるくなってしまう。食べる段階では、下手したら20度ぐらいになってる。これでは冷麺気分は味わえない。

とはいえ、あなたの街のほっとステーション(だっけ?w)で、いつでも気軽に冷麺が手に入るのである。その点に関しては素直に感謝しないといけないし、こうやって文句は言いつつも、また買っちゃうんだろうなあ。酢と氷を自分で用意して食えばいいわけだしね。

2014年7月30日水曜日

平壌麺屋(ソウル・東大門)

冷麺(税込11,000ウォン)。2014年6月
ソウル。地下鉄・東大門歴史文化公園駅のすぐ近くに、平壌冷麺の専門店がある。その名も「平壌麺屋 (평양면옥)」。

創業者は平壌から渡ってきた人で、いまは3代目が継いでいるという。解放後の混乱期や朝鮮戦争中、北から南へ渡ってきた人が大勢いた(もちろん逆もたくさんいた)。そういう人が平壌冷麺や咸興冷麺の店を出したケースがけっこうあるようで、ソウルにもその手の冷麺専門店がいくつかある。

とういうわけで、今回、そんな店のひとつである「平壌麺屋」を訪れてみたわけだ。ここを選んだ決め手は、ネット上の評判、そして何よりもこの単刀直入な店名である。

駅から南へ少し歩くと、店がある。見逃すことはまずない。隣接する機械式駐車場のタワーに、でっかく「平壌麺屋」と書かれているからだ(駐車場が店のものなのかはわからない)。

店内は広い。四角いテーブルがずらりと並び、天井に白い蛍光灯が煌々と輝く。厨房に目をやると、たくさんの従業員がせわしく調理にいそしんでいる。いささか殺風景というか、少し古びた社員食堂のような印象である。少なくとも、来店前に想像していた「3代続く平壌冷麺専門店」のイメージとは違った。

しかし、だからといって雰囲気が殺伐としているわけではない。店内はけっこう賑わっていて、ぱっと見た限り、客は中高年がほとんどだ。そして、普通に冷麺を啜っているグループもいれば、肉料理やマンドゥを並べて昼間からソジュジャン(焼酎グラス)を傾けているグループもいる。

厨房に近い奥のほうの席に着き、冷麺を注文。値段は11,000ウォンである。日本円で1,100円ぐらい。韓国の物価からすれば、かなり強気の価格設定だ。この値段を考えれば、客層が中高年中心なのも納得がいく。

白菜キムチとトンチミ(大根の水キムチ)が出てきて、まもなく冷麺も出てきた。蛍光灯に照らされて、透き通ったつゆがますます透き通って見える。そして、つゆの真ん中に茶色い麺の島があって、その中央に具のタワーがそびえている。なるほど、やはり平壌冷麺といえばこのスタイルなのか。ハサミが用意されていないので、麺は切らずにこのまま食べるようだ。この点も平壌冷麺らしい。

麺の島に箸を入れ、ほぐし、すする。不思議な麺だ。日本蕎麦ほどではないが、かなり「蕎麦蕎麦しい」。冷麺らしいコシを具備していながら、いとも容易く噛みきれる。本場の平壌冷麺は蕎麦粉100%だと聞いていたけど、蕎麦の比率が高いとこうなるのだろうか。

そしてこの麺、つゆがよく絡む。つゆは肉の出汁がしっかり効いていて、淡泊だけど抜け目の無い感じ。例のごとく、最初の味見を終えたら早々に酢とキムチをブチ込んだ。それからは、ほぼノンストップで一心不乱に麺を啜り続けたのであった。

いままで出会った冷麺のなかでは、僕の「理想の冷麺」像に最も近いのが、この「平壌麺屋」の冷麺だ。なにしろ、この蕎麦っぽい麺が気に入った。

目下、平壌に行く可能性よりはソウルに行く可能性のほうが高いので、またこの店に来てみたい。あ、だけど別の冷麺専門店を開拓してみたい気もする。ただ、どっちにしろ問題なのが、韓国では「ぼっち飯」があまり一般的ではないので、1人だと行きづらいという点だ。今回はよかったけど、次回もいっしょに来てくれる人がいることを願うしかない。


こちらは携帯で撮った写真

2014年7月20日日曜日

南大門のり巻き(東京・大久保)

水冷麺(980円)。2014年6月
新大久保の大久保通り沿いには、判で押したかのごとく似たような韓国料理屋が軒を連ねている。そんななかで、あえてこの「南大門のり巻き」の特徴を挙げるとすれば、3階建ての建物を丸々専有する大型店だという点であろう。

「韓定食南大門」と「南大門のり巻き」という2つの看板を出しているので、一瞬、階によって違う店なのかと思ってしまった。「あれ、1階?2階?」という迷いの表情を浮かべていると、店の前でキムパプ(のり巻き)を売りつつ客引きをしているオバチャンがそれを察知。どの階も同じだから、と、1階へ入るよう促してきた。

平日のランチタイム。席に着いて注文を済ますと、小皿に乗った6種のパンチャン(おかず)が出てくる。この日は2人で訪れたのだが、人数によってパンチャンの品数や量がどのように変わるのか、少し気になるところ。キムパプを売りにしている店なので、キムパプも頼んでみた。

まわりを見わたすと、女性2〜3人組の客がちらほら。食後のおしゃべりに花を咲かせている。ときおり、さっきのオバチャンが店内に入ってきて、ホール兼調理を担当していると思われるニイチャンにキムパプや弁当の注文を伝える。そんな光景を横目に見ながら、パンチャンとキムパプをつまんで冷麺を待つ。

で、まあ、冷麺自体に関して特筆すべきことはない。たまにある、つゆの一部がシャーベット状になってるタイプ。冷麺は冷えてるからこそ冷麺なんだし、こういうのも全然アリだと思う。

ただ、僕の座った席がたまたま冷房のよく当たる場所だったので、冷麺との相乗効果で体の内と外から冷え切ってしまった。会計を済ませて外へ出ると、大久保通りを流れる6月のぬるい風が、妙に心地よく感じられた。

2014年7月19日土曜日

元祖平壌冷麺屋 川西店(神戸・長田)

冷麺 大(900円)。2013年8月
うだるような蒸し暑さのお盆過ぎ、在日コリアンが多く暮らす長田を訪れた。めざすは「元祖平壌冷麺屋 本店」。地下鉄長田駅からJR新長田駅の方向へと歩いて行った。そしたら偶然にもこの「川西店」の前を通りがかったので、まあここでいいかということで「川西店」の冷麺を味わってみることになった。

あとで知ったことだが、ネット上の評判には「本店」よりも「川西店」の冷麺がうまいとするものもある。また、1階席・2階席に分かれていて手狭に感じる「本店」に比べ、「川西店」は余裕のある作りになっている。地元のオバチャンたちが在日朝鮮語で談笑していて、レジ前のラックには在日コリアン団体の発行する雑誌が置かれていた。

さて、肝心の冷麺である。店名に「平壌冷麺」と掲げているものの、ここの冷麺は、いわゆる現代の平壌冷麺とは大きく異なる。盛りつけといい、太くて白い麺といい、どことなく盛岡冷麺を連想させられる。実際、盛岡冷麺の老舗店には「平壌冷麺」を標榜しているものが少なくない。かつて日本でも「朝鮮冷麺といえば平壌が本場」というイメージが強かったという。なので、実際には平壌と直接の関係がなくても、そのブランドイメージにあやかって「平壌冷麺」の看板を掲げるようになったケースが多いのではないかと思う。政府の統計によれば、日本に住む朝鮮籍・韓国籍の人々のうち朝鮮半島北半分にルーツを持つ人は0.5%程度である。

ところが、神戸日報の記事が伝えるところによると、「元祖平壌冷麺屋」の創業者夫妻は実際に平壌出身なのだという。70年間、3代にわたって平壌冷麺の味を守りつつ、異国の波風に揉まれてきた。そして、日本人の好みを反映してかどうかはわからないが、盛岡冷麺にも似た太くてコシの強い麺を出し続けてきた。一方、本場の平壌でも冷麺は独自の進化を遂げ、「玉流館」に代表される蕎麦100%の細麺が主流になった。

同じ「平壌冷麺」でも、平壌と長田とで、ここまで違う。土着化した日本の「平壌冷麺」が紡いできた新たな伝統。その70年という歴史の長さを感じる1杯だった。



2014年7月18日金曜日

半兵ヱの「昭和冷麺」(280円)

昭和冷麺(280円)。2012年9月、半兵ヱ高田馬場店にて

居酒屋チェーン「半兵ヱ」の冷麺。メニュー上は「昭和冷麺」という名前である。「半兵ヱ」は薄利多売を売りにしているだけあって、おつまみも飲み物もお財布にやさしい価格設定である。この冷麺も決して例外ではなく、なんと1杯280円である。驚異的な安さだ

2014年11月、半兵ヱ八王子店にて

いちおうは朝鮮冷麺を意識していると思われるが、実は麺が「マロニー」もしくはそれに類する何か)なのである。「昭和冷麺」というネーミングの由来も、この安さの秘訣も、そこにあるのだろう。

麺はマロニーなので、冷麺にしては太い。とはいえ、盛岡冷麺だったらこのくらい太いのもないことはなさそうだ。麺が太いゆえ、写真だと冷麺全体が小さく見えるかもしれない。しかし実際には、280円だからといってボリュームも決して少ないわけはなく、韓国・朝鮮料理店で供される標準的な冷麺に引けを取らない。

同上

邪道といえば邪道だが、「発想の勝利」ということで素直に評価したい。そもそも、マロニーはジャガイモ澱粉を主原料としている。朝鮮半島にもイモを用いた冷麺があることを思えば、あながち間違っていないと言える。まあそれ以前に、280円で冷麺気分が味わえるのだから何だって許せるではないか

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2014/11/06 タイトル変更、加筆、写真追加

韓国館(ウズベキスタン・タシケント)

冷麺。2012年9月
高麗人が数多く住むウズベキスタン。その首都タシケントの中心部に、韓国料理店「韓国館(한국관, Хан Кук Кван )がある。韓国・朝鮮系住民のみならず、この地でも暮らす日本人にとってもオアシスとして機能している様子だった。われわれが訪れたとき、別の席で日本人ビジネスマンと思われるグループが談笑しながら食事をしていた。そういった客層を反映してか、朝鮮料理に加え、「うどん」「トンカツ」など日本料理も出していた。店員は韓国・朝鮮系、あとロシア系の人がいたかな。

1週間にわたってウズベキスタンを訪れ、その最初と最後の食事をここ「韓国館」でした。1度目は、中央アジアで朝鮮料理が食えるという物珍しさから。2度目は、慣れない中央アジアの食事で完全に機能不全に陥った胃腸を癒やすため。

あれから2年が経ったが、なぜかここの冷麺の味ははっきりと思い出せる。麺はいわゆる平壌冷麺よりは少し太いものの、ちゃんとした蕎麦系。氷混じりのつゆは出汁が利いていていて、酸味と甘みも適度だ。途中から、パンチャンの白菜キムチを泳がせて味を変えてみた。キムチはよく漬かっていて、粗挽きの唐辛子がたっぷり入っている。

遠い中央アジアで冷麺が食えるありがたさによる補正を差し引いても、この冷麺は人生史上でも5本の指に入る。「韓国館」に来たなら、下手に定食のたぐいを食うよりは、この冷麺を食ったほうがいい。






おおまかな位置

2014年7月17日木曜日

板門店(東京・上野)

冷麺(950円)。2014年4月
主に名前が理由で、前から気になっていたこの店。 あの一帯にしては小綺麗な焼肉屋さんだけど、値段も高め。



故月(大分・別府)

冷麺 並盛(650円)。2014年1月撮影
別府冷麺。中国東北部からの引き揚げ者が持ち込んだのが発祥という。なので、いちおう朝鮮冷麺を由来としているようだが、あまり原形を留めていない。つゆは魚介系の出汁が聞いていて、甘みと醤油味が強い。完全に和風。麺は太い小麦の麺で、コシはあんまりないけど歯応えはかなりある(つまり、単に硬い)。冷麺というよりはうどんを食っている気分だ。冷麺を食いたいときに食うものではなく、別物と割りきったほうがいい。

「さんふらわあ」などが発着する別府国際観光港から徒歩約5分。乗船前の腹ごしらえにちょうどよかった。

焼肉大門(東京・上野)

冷麺(940円)。2013年12月

なぜかサクランボが乗っている。焼肉とキムチもうまかった。特に、ここのカクテキはよく漬かってて毎回感動する。