2014年7月19日土曜日

元祖平壌冷麺屋 川西店(神戸・長田)

冷麺 大(900円)。2013年8月
うだるような蒸し暑さのお盆過ぎ、在日コリアンが多く暮らす長田を訪れた。めざすは「元祖平壌冷麺屋 本店」。地下鉄長田駅からJR新長田駅の方向へと歩いて行った。そしたら偶然にもこの「川西店」の前を通りがかったので、まあここでいいかということで「川西店」の冷麺を味わってみることになった。

あとで知ったことだが、ネット上の評判には「本店」よりも「川西店」の冷麺がうまいとするものもある。また、1階席・2階席に分かれていて手狭に感じる「本店」に比べ、「川西店」は余裕のある作りになっている。地元のオバチャンたちが在日朝鮮語で談笑していて、レジ前のラックには在日コリアン団体の発行する雑誌が置かれていた。

さて、肝心の冷麺である。店名に「平壌冷麺」と掲げているものの、ここの冷麺は、いわゆる現代の平壌冷麺とは大きく異なる。盛りつけといい、太くて白い麺といい、どことなく盛岡冷麺を連想させられる。実際、盛岡冷麺の老舗店には「平壌冷麺」を標榜しているものが少なくない。かつて日本でも「朝鮮冷麺といえば平壌が本場」というイメージが強かったという。なので、実際には平壌と直接の関係がなくても、そのブランドイメージにあやかって「平壌冷麺」の看板を掲げるようになったケースが多いのではないかと思う。政府の統計によれば、日本に住む朝鮮籍・韓国籍の人々のうち朝鮮半島北半分にルーツを持つ人は0.5%程度である。

ところが、神戸日報の記事が伝えるところによると、「元祖平壌冷麺屋」の創業者夫妻は実際に平壌出身なのだという。70年間、3代にわたって平壌冷麺の味を守りつつ、異国の波風に揉まれてきた。そして、日本人の好みを反映してかどうかはわからないが、盛岡冷麺にも似た太くてコシの強い麺を出し続けてきた。一方、本場の平壌でも冷麺は独自の進化を遂げ、「玉流館」に代表される蕎麦100%の細麺が主流になった。

同じ「平壌冷麺」でも、平壌と長田とで、ここまで違う。土着化した日本の「平壌冷麺」が紡いできた新たな伝統。その70年という歴史の長さを感じる1杯だった。