2014年10月28日火曜日

八道製麺名家(大久保・職安通り K-SQUARE内)

水冷麺(900円)。2014年10月

新大久保の韓流ビル「K-SQUARE」をご存じだろうか。大久保通りではなく職安通り沿い、しかも新大久保というよりは東新宿に近い微妙な場所にある。それゆえ、大久保によく行く人でも案外、馴染みが薄いかもしれない。かくいう僕がそうだった。

しかし今回、K-SQUARE 3階のフードコートで冷麺が食べられることを知ってしまった。それで、小雨のぱらつく10月のある日、訪れたのである。


K-SQUAREは、1階が韓国食材などを扱う「韓流百貨店」2階がコスメやイベントスペース、そして3階がフードコートという構成。ただし1階の「韓流百貨店」10月26日をもって営業を終了した。僕が訪れたとき閉店セールで「コンディション」や「ダシダ」を投げ売りしていた。

1階「韓流百貨店」の営業終了を知らせる掲示(左)

もちろん、1階のテナントだった「韓流百貨店」がなくなるというだけであって、2階の店舗や3階のフードコートに影響はない(たぶん)。というわけで、閉店間近で棚がスカスカになった韓流百貨店を横目に見ながら、エスカレーターをめざす。そして3階に辿り着いた



いくつかのお店があるが、今回の目当ては「八道製麺名家」。店名は「八道・製麺名家」で区切れる。「八道」とは朝鮮八道のことであり、要するに朝鮮半島全土ということ。この店は、朝鮮半島各地の名物麺料理を、それぞれの専門店とコラボして提供するというコンセプトらしい。

そのなかでも特に売りにしているのが、釜山名物の「ミル麺」だ。メニューなどを見てもミル麺押しがやたら強く、初めはミル麺の専門店なのかと思ったぐらい。なので、さすがにミル麺も気になったが、ここは初志貫徹して水冷麺(900円)を食べることにした。咸鏡道代表の咸興冷麺ということで、一応ちゃんと用意されている。


注文の方法は、一般的なフードコートと変わらない。お目当ての店舗で注文を伝え、精算を済ませると、例のリモコン式ブザーのような装置を渡される。料理が出来上がるとそれが鳴り、韓国人のお兄さんから冷麺を受けとった。


これが「八道製麺名家」の水冷麺だ。スープは12時間煮込んで作られているとのことで、さすがにいいダシが出ている。まあダシと塩気以外の味はあまりしないが、とりあえずさじですくって飲むとうまい

麺はやや太めで、やたらストレート。そのうえ、すごくツルツルしているので、せっかくのスープがあまり絡まない。ミル麺と同じ製麺設備を使ってる都合上、こういう感じの麺になってしまうのだろうか。

肉は牛肉のみ。ダシを絞りつくされたボソボソのやつ。冷麺の肉は薄く切ってある場合が多いが、ここのは角材のように荒っぽく棒状に切ってあり、噛みごたえがあるトンチミ(大根の水キムチ)は漬かりが浅く、あまり酸っぱくない。逆に付け合わせの白菜キムチはわざとらしい酸味が際立ち、これも微妙。

こうして書いてみるとダメ出しばかりになってしまったが、少なくともスープに関しては人に薦めても問題ないレベルだったと思う。それに、大久保といえど麺・スープ自家製の冷麺は貴重な存在だ。フードコートのなかの店舗だし、基本的にはミル麺押しの店なので見落とされがちだが、大久保で冷麺を食べたくなったときの選択肢のひとつとして覚えておいて損はない


ちなみに、このフードコートには職安通りを見おろす窓があり、そのガラスは来日した韓国のスターたちのサインで埋め尽くされている(冒頭で述べたように、階下にイベントスペースがある)。

この日は路面が雨に濡れて黒くなり、ガラスの白い文字がいっそう映えていた。CRAYON POPのサインが目に留まったので、食器を下げがてらパシャリと1枚。そしてまたエスカレーターを降り、雨上がりの職安通りを歩いて帰った。